詩人・坂村真民の代表作 「二度とない人生」

 


 
  二度とない人生だから 一輪の花にも 無限の愛を そそいでゆこう
  一羽の鳥の声にも 無心の耳を かたむけてゆこう
 
  二度とない人生だから 一匹のこおろぎでも ふみころさないように
  こころしてゆこう どんなにか よろこぶことだろう
 
  二度とない人生だから 一ペんでも多く便りをしよう
  返事は必ず 書くことにしよう
 
  二度とない人生だから まず一番身近な者たちに できるだけのことをしよう 
  貧しいけれど こころ豊かに接してゆこう
 
  二度とない人生だから つゆくさのつゆにも めぐりあいのふしぎを思い
  足をとどめて みつめてゆこう
 
  二度とない人生だから のぼる日 しずむ日 まるい月 かけてゆく月
  四季それぞれの 星々の光にふれて わが心を あらいきよめてゆこう
 
  二度とない人生だから 戦争のない世の実現に努力し
  そういう詩を 一篇でも多く作ってゆこう
  わたしが死んだら あとをついでくれる若い人たちのために
  この大願を 書きつづけてゆこう